鐚銭・長崎貿易銭・絵銭

最終更新:2016/7/16



鐚銭


鐚銭とは、中国から渡来した立派な銭に対して、日本で私鋳された出来の悪い銭のことを言う場合が多い。私鋳でも、ニセガネではなくて、貨幣として通用した。



上の写真左は綺麗な永楽通宝。右は、作りの悪い永楽通宝。鐚銭の作り方は、綺麗な銭を使って型を取ることが多かったため、鋳痩して直径が若干小さくなっている物が多い。


上の写真は背面。
右は背面がまともに鋳造されていないことが分かる。
鐚銭の鋳造場所は不明な場合が多いが、鹿児島県加治木町で鋳造された鐚銭は、背面に加・治・木の文字があって、鋳造地が分かる物がある。

稚拙に作られた私鋳銭は鐚銭だけれど、高度な技術で作られたならば、鐚銭とは判断できない。永楽銭の多くは、渡来銭ではなく、日本国内で高度な技術で作られた私鋳銭ではないかとの考えもある。


昔の銭は、銅・鉛・錫の合金だったが、日本は錫の産量が少ないので、鐚銭の中には、銅の含有量が多いものがある。この場合、流動性が悪くなり、成形不良品が多い。銭貨の表面の錆を研磨して落とすと、銅分が多い場合は赤みを帯びている。

上の写真左は、赤みを帯びた銭貨、右は普通の渡来銭で、黄金色をしている。5円玉は、銅・亜鉛の合金なので、もう少し黄色が強い。


加治木銭

加治木洪武:中字,小治「洪武通宝図譜2-4-1(八)」

 鹿児島県加治木町では、かつて、盛んに鐚銭が鋳造された。この中には、裏に加治木を示す「治」と書かれたものがあり、容易に鐚銭であることが分かる。また、「加」「木」と書かれたものもある。
 鉄分を含むことが多く、写真のものも磁石に付く。


鐚銭鋳造地は、大阪・堺、京都、鹿児島・加治木 等、全国に広がっている。

堺では、多種類の鐚銭の鋳型が発見されている。



上の写真は、堺で発見された、模鋳銭の鋳型 (国立歴史民俗博物館の複製品展示の写真)。

以下の銭は、模鋳銭の鋳型が堺で発見されている。(第1位などは、日本で発掘されている渡来銭残存数の順位)
第1位 皇宋通宝(宋銭)  第2位 元豊通宝(宋銭) 
第3位 熈寧元宝(宋銭)  第4位 元祐通宝(宋銭)
第5位 開元通宝(唐銭)  第6位 永楽通宝(明銭)
第7位 天聖元宝(宋銭)  第8位 紹聖元宝(宋銭)
第9位 政和通宝(宋銭)  第10位 聖宋元宝(宋銭)
第11位 洪武通宝(明銭)  第12位 祥符元宝(宋銭)
第15位 嘉祐通宝(宋銭)  第16位 咸平元宝(宋銭)
第17位 治平元宝(宋銭)  第20位 元符通宝(宋銭)
第21位 景祐元宝(宋銭)  第22位 嘉祐元宝(宋銭)
第23位 大観通宝(宋銭)  第24位 至和元宝(宋銭)
第26位 太平通宝(宋銭)  第27位 治平通宝(宋銭)


長崎貿易銭

 長崎貿易銭は渡来銭ではない。

 幕府は寛永13年(1636年)より寛永通寳を鋳造し、その後、寛永通宝か普及すると、これまで使用されていた渡来銭の使用を禁止した。
 当時、中国やベトナムでは銅銭が不足し、輸入の需要が多かった。オランダは日本からこれら地域に銅銭を輸出するため、万治二年(1659年)、幕府に対し東洋貿易に使う銅銭の鋳銭依頼をした。当時、幕府は寛永通宝の輸出を禁止していたので、別な銭を長崎で鋳造し輸出に使用した。

 このとき鋳造された銭貨を長崎貿易銭という。宋銭を模倣した「元豊通宝」「祥符元宝」「天聖元宝」「嘉祐通宝」「熙寧元宝」「紹聖元宝」「治平元宝」の七種類が造られている。圧倒的に多いのは「元豊通宝」の隷書体(写真のものです。)
 上の写真右は長崎貿易銭ではなくて、安南手類銭(ベトナムで私鋳された銭)かもしれない。

 隷書体の「元豊通宝」には字体のバラエティーがいくつもある。




 下の左写真は「元豊通宝」の行書体。中央は「熙寧元宝」の篆書体。左は「祥符元宝」の楷書体。中国で鋳造されたものと比べ、稚拙な字体。



 下の写真は、「天聖元宝(楷書体)」「紹聖元宝(篆書体)」「嘉祐通宝(楷書体)」。




このほか、「元豊通宝(篆書体)」「熈寧元寳(楷書体)」「治平元寳(篆書体)」が存在する。


 参考文献:
  貨幣 (日本史小百科)』滝沢武雄・西脇康/編 1999/02 東京堂出版


絵銭

 「銭」が流通のために作られたのに対して、「絵銭」は流通を目的としていない。中国でも日本でも作られている。
 日本では、室町時代の末ごろには作られているようで、江戸時代には盛んにいろいろな種類のものが作られた。現在でも、寺社の土産など、縁起物として作られていることもある。


 絵銭の絵柄には、貨幣を模したもののほか、「南無阿弥陀仏」「南無妙法蓮華経」などの文字や仏画、七福神など縁起の良い絵柄のもの、男女の性行為など、様々なものがある。左の写真は「南無妙法蓮華経」の文字、右の写真は猿が馬を曳いている絵柄。



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