ロシアにおける「つるふさ」の法則


 いきなりふざけた話題である。「つる」は禿げ頭のこと。「ふさ」はその逆。この法則の意味は、ロシアの指導者は「つる」「ふさ」が交互に現れるということである。単なる偶然であろうが、レーニン以来、現在まで続いているから、不思議である。私がこの法則を知ったのは、1980年代前半、ブレジネフ後継者が騒がれていた頃のことであったので、ソビエト連邦ウオッチャ−には、以前からよく知られていることなのだろう。


「つるふさ」の法則を詳しく説明すると、次の3つの内容がある。
  @ つるふさ第一法則
    指導者は「つる」「ふさ」が交互に現れる。
  A つるふさ第二法則
    「つる」は改革・革新派で能力・政策が期待される、「ふさ」は保守派・権力欲の人で、まわりを側近で固める。
  B つるふさ第三法則
    「ふさ」:基本的には死ぬまで権力にとどまる。
    「つる」:失脚するとかで権力を失う。



 具体的に見てみよう。

  レーニン:@つる。A革命家。B病気をした時、心ならずもスターリンに権力を奪われる。晩年は病院に幽閉状態。

  スターリン:@ふさ。A保守派。自分の意気のかかった者以外は、次々に粛清し、絶大な権力を握る。B死ぬまで権力にとどまる。

  フルシチョフ:@つる。A改革派。スターリン批判を行い、暗いスターリン時代への決別という点で、内外から期待される。B失脚し権力を失う。晩年は年金生活。

  ブレジネフ:@ふさ。A保守派。ブレジネフ末期、ソ連は閉塞状態に陥る。晩年多数の勲章を受章。B死ぬまで権力にとどまる。

  アンドロポフ:@つる。A改革派。閉塞状態に陥ったソ連を立て直すことを期待されて書記長に就任。ただし、就任直後から病気のため目立った成果は無い。Bつるでは、例外的に権力をもったまま死亡。しかし、死ぬまで権力にあったというより、権力を握ってすぐに死んでしまったと言うのが実態である。

  チェルネンコ:@ふさ。A保守派。単に共産党内人脈が強固だったと言うだけの理由で書記長に就任した。B死ぬまで権力にとどまる。

  ゴルバチョフ:@つる。A改革・革新の旗手。ペレストロイカは世界中の流行語となる。B結局ソ連を崩壊させてしまい、権力を失う。現在は国際政治学者として活躍している。

  エリツイン:@ふさ。A保守派か改革派かは評価が分かれる。しかし、権力を側近で固め、汚職の噂が絶えなかった。B憲法の規定により引退。

  プーチン:@つる。A保守派か改革派か評価は定まっていない。B現職。


 いかがだろうか。見事なまでに、「つるふさ」の法則が成り立っていることがわかるだろう。ソ連からロシアになったところで変わったところはあまり無いのである。ただし、ソ連時代には、いったん権力の座に付くと、死ぬか、失脚するかしかなかったのだが、ロシア憲法では大統領3選禁止の規定があるため、引退することが多くなると思う。

レーニン スターリン フルシチョフ ブレジネフ アンドロポフ
チェルネンコ ゴルバチョフ エリツイン プーチン メドベージェフ



  さて、つるふさの法則から、共産党のジュガノフ党首を見てみよう。ジュガノフ党首は、前々回の大統領選挙で、エリツィンと争ったが、敗北した。つるふさ第三法則を考えると、エリツインがこの場面で権力を失うことはありえないので、ジュガノフに勝ち目は無かったわけである。前回選挙では、プーチンとジュガノフが争い、プーチンが勝利した。つるふさ第一法則によれば、プーチンの次は「ふさ」の番なので、「つる」のジュガノフには、今後、権力を奪取する可能性は無い。結局、前回選挙に唯一勝利可能性があったのに、この機会を逃したジュガノフに権力の可能性はなくなった。



  次に、プーチンの今後を、つるふさの法則から推測してみよう。第三法則から、プーチンが失脚する可能性は充分にある。ただし、ロシア憲法では大統領任期は最長8年と短いので、失脚しないことも十分に考えられ、残念ながら、プーチン失脚については判定できない。また、第二法則に関係するが、つる時代は一般に政権内部は混乱する。このことから、ロシア政局の安定はプーチン時代にはありえないことが分る。


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