尖閣問題  参考書(参考文献)

最終更新 2015.8.19


尖閣の領有権問題を扱っている本の中で、特に勧めたい本

 京都大学教授(日本史)・井上清は、1972年2月から、複数の論文を発表し、尖閣中国領論を主張した。同年10月には、『尖閣列島−釣魚諸島の史的解明』を現代評論社より出版した。この本は、第三書館より再版されており、容易に入手できる。
 井上清説に対して、国士舘大学助教授(国際法)・奥原敏雄は、1973年から、いくつかの論文を発表し、井上説に反論した。奥原の論文は、尖閣問題を理解する上で重要であるが、今では入手が難しい。沖縄国際大学教授(国際法)・緑間栄による著書『尖閣列島』は、奥原説と類似の視点で、尖閣日本領論を主張している。緑間の本は絶版になって久しいが、大きな図書館には蔵書があることも多い。
 井上の本と緑間の本を読むと、尖閣問題の主要な論点が何であるか理解できる。
 高橋庄五郎は、井上説と奥原説をを比較し、両者ともに不十分な点を批判した上で、尖閣領有論を唱えている。尖閣論争の経緯や、日中両国の主張の比較も詳しいので、尖閣問題を研究する出発点としては、有用である。

尖閣は中国の領土であるとの立場での記述

井上清/著 『尖閣列島 釣魚諸島の史的解明』  (1996/10) 第三書館

 本書は、1972年10月に現代評論社から出版された本の再刊。2012年10月に、新書版で復刊した。

 日本史が専門の井上清教授による、歴史的見地から見た尖閣問題。尖閣問題は、日清戦争以前と、下関条約以降沖縄返還までと、沖縄返還以降とに分けられるが、本書は、日清戦争以前の史実を明らかにして、この時代、すでに、尖閣は中国領だったと説明している。歴史学者の著書なので、史的立場の見解。

・・・つづく・・・
尖閣は日本の領土であるとの立場での記述

緑間栄/著『尖閣列島』 (1984年) ひるぎ社


 尖閣は日本領であるとする解説。尖閣が日本の領土であるとする解説本はいくつかあるが、その中で、価格も手ごろの割には良く書かれているが、すでに絶版であることが残念だ。尖閣に関心が高まっている中、再販してほしい。
 本書の前半は、尖閣中国領有論を紹介し、それに対する反論を展開する。後半は、日本の主張の説明と、領土問題の国際法の簡単な説明。

・・・つづく・・・
尖閣日本領論と中国領論の比較

高橋庄五郎/著『尖閣列島ノート』  (1979/10) 青年出版社

 1970年前後に、日本・中国が尖閣列島の領有を主張するようになると、井上清の尖閣中国領論と、奥原敏雄の尖閣日本領論が有名になった。
 この本は、高橋庄五郎による、両者を比較した上での、尖閣領有論。ただし、一貫して論を展開したものではなくて、著者の研究ノートのようなもののまとめであるので、重複している部分も多く、若干読みにくい。著者は、井上・奥原どちらの論も批判しているが、特に奥原の論を批判する点が多い。奥原の歴史知識に稚拙な点があるので、ここを主に批判しているためである。

 尖閣論争の経緯や、日中両国の主張の比較も詳しいので、尖閣問題を研究する出発点としては、有用な書である。
尖閣の動植物

高良鉄夫/著 『沖縄の秘境を探る』 琉球新報社(昭和55年7月)

 本の前半は「無人島は生きている」の副題で尖閣の動植物を取り上げる。本来は、学術的内用だが、一般読者を対象に、平易に書かれている。

・・・つづく・・・




尖閣の領有権問題を扱っている本

尖閣日本領論に批判的

『日中領土問題の起源―公文書が語る不都合な真実』村田忠禧/著(2013/06) 花伝社


 尖閣列島の領土問題を理解するためには、歴史的経緯を理解する必要がある。中世、中国・琉球が尖閣と関係があったが、日本は全く関係を有していなかった。このため、尖閣の領有権を歴史的立場から理解するためには、中世における中・琉・日の関係を理解することが欠かせない。
 本書は、この点を重視し、本の1/3程度で、中世、琉球と明・清の関係、琉球と日本(島津藩)の関係を詳述し、琉球の置かれた政治上の位置を明確にしている。さらに、明治期に日本が尖閣を領有した経緯を明らかにし、「窃取という言葉はこういう場合に使うのが適切である(P201)」と評している。

・・・つづく・・・
尖閣日本領論に批判的

村田忠禧/著『史料徹底検証 尖閣領有』花伝社 (2015/1)


 日本政府は、尖閣はどの国の領土でもない無主の地であることを慎重に調査した上で領有したと説明している。本書は、公開公文書を丹念に調査し、尖閣に対する日本政府の説明を否定している。事実を綿密に調査した上で、結論に至る著者の真摯な態度には好感が持てる。
 本書によると、日本が尖閣は無人島であることを調査したのは、1885年10月の一回だけで、このときの調査結果を受けた日本政府は、清国との係争を懸念して、日本領土への組み入れをしていない。日本が、尖閣領有を決めたのは、日清戦争で日本の勝利が確定的となった1893年のことだった。その間、尖閣を調査した事実はない。
 本書の内容は「明治の琉球処分の経緯」「沖縄県令・西村捨三の沖縄統治」「尖閣領有の経緯」である。また、本の後ろ1/3には、重要な公文書が掲載されているが、手書きの文書が活字化されているため、領土問題の研究や高度な学習に便利。
尖閣問題の解決方法の提言

豊下楢彦/著 『 「尖閣問題」とは何か 』 (2012/11) 岩波現代文庫

 本のメインテーマは、。尖閣問題の歴史的経緯や中・台・米の態度、さらには、他の領土問題である、北方領土問題についても詳しい。
 著者は戦後史研究者の第一人者であるため、日本の立場に固執することなく、客観的な説明になっており、日本の領土問題を考える上で、大いに参考になる。著者の説には、賛否両論あるだろうが、尖閣問題に限らず、日本の領土問題を考える上で、欠かせない一冊だ。
尖閣問題解決のための外交政策

孫崎享/編『検証 尖閣問題』 (2012/12) 岩波書店

 本の前半は、孫崎氏による尖閣問題解説。後半は、孫崎氏を含む数名の専門家との対談。

 前半、孫崎氏の尖閣問題解説は、領土問題はどのように解決すべきかとの、外交的視点で尖閣問題について書 いている。尖閣問題の歴史的経緯などは少ない。

・・・つづく・・・
尖閣問題を中心とした日本の外交

孫崎享/著『小説外務省 尖閣問題の正体』現代書館 (2014/4)


 尖閣問題を中心とした外務省・日本外交の問題を、小説の形で明らかにしている本。わかりやすく、読みやすい。孫崎氏の本を読んだことのない人はもちろん、すでに何冊か読んだ人にもお勧めです。
尖閣領有権に対するアメリカの態度の解明

ロバート・D・エルドリッヂ/著、吉田真吾・他/訳
『尖閣問題の起源 沖縄返還とアメリカの中立政策』名古屋大学出版会 (2015/4)


 アメリカは沖縄返還とともに尖閣の施政権を日本に返還した。現在、尖閣が日本の施政下にあることを認めているが、領有権に対して、中立の立場を崩していない。本書は、このようなアメリカの態度は、沖縄返還以前から続いていることを明らかにし、その経緯を詳細に追っている。

・・・つづく・・・
井上清説の批判および尖閣日本領論

浦野起央/著『尖閣諸島・琉球・中国 日中国際関係史』  (2005/05)  三和書籍; 増補版  初版は2002年12月発行

 尖閣諸島の領有権問題について、日本領論を主張する論文。引用文献も詳細に示しているので、学習・研究の手引きに有用。定価1万円を超える本で、ページ数も300ページを超えるが、空白部分が多く、割高感がある。

 尖閣問題では、井上清氏が中国領論を唱えた。浦野起央の著書は、井上論文で近代以前に尖閣は中国領だったとの説に対して、論拠が不十分と論駁している。しかし、そもそも、近代以前の領有関係は、現代の領有と同列に論じることは出来ないので、現代の国際法から見たら、前近代の領有には不十分な点があるのは当然のことである。浦野の主張は、尖閣が中国領との主張を論拠不十分と論駁し、日本領論が正当であると主張しているが、日本領論であることを積極的に主張する精密な論拠を展開してほしかった。

・・・つづく・・・
尖閣日本領論に批判的

村田忠禧/著 『尖閣列島・釣魚島問題をどう見るか―試される二十一世紀に生きるわれわれの英知 (隣人新書)』  (2004/7/1) 日本僑報社


 本の右側から70ページ余りが日本語、左から50ページ余りが中国語で書かれている。日本語だけを読む者にとって、新書版70ページの小さい本であるので、内容は豊かとはいえない。
 日本の尖閣領有の根拠は無主地先占であるが、本書では、この点を論駁している。無主地先占が否定されると、日本の領有の根拠が根幹から揺らぐので、本書の指摘は重要である。多くのページ数を、日本の尖閣領有批判に向けているが、中国の論拠にも批判的である。
 分量が少ない割には、ちょっと高いので、なかなか購入する気にはならないかもしれないが、図書館で借りるのならば、尖閣領有の論拠と欠陥の概要を知る上で、一読の価値はあるだろう。
井上清説支持

「尖閣問題Q&A―事実を知って、考えよう」 岸本和博/著 第三書館 (2013/11)

  尖閣問題を冷静に考えてみたい人にはお薦めの本です。

 尖閣問題に対して、日本政府の主張に批判的な立場での記述。Q&A形式で書かれている。本の前半が、尖閣諸島領有問題で、後半が、排他的経済水域の話。
 領土問題に関して、多くの本は、日本の正当性を主張する立場で書かれているが、本書は、それとは逆の立場なので、著者の考えに、賛同しない人も多いだろう。一つの事実に対して、どのような解釈をするのか、あるいは、どのような心情を持つのか、それは、人それぞれだ。
 しかし、尖閣問題で、日本の立場を主張する多くの本は、日本に都合の悪い事実を無視して、さらに、事実と異なる虚偽や、故意に誤解を与える記述をすることがある。本書は、日本に都合の悪い事実を積極的に取り上げており、尖閣問題を総合的に判断するためには、欠かせない材料になる。

・・・つづく・・・
奥原敏雄説支持

上地龍典/著『尖閣列島と竹島 中国・韓国との領土問題』 (1978/10) 教育社


表題は『尖閣列島と竹島』となっているが、内容の80%は尖閣の話。
尖閣・竹島ともに、日本の領土であることを主張する内容であるが、ページ数の関係だろうか、竹島に対する論拠は、今一つ明確ではない。

 尖閣が日中どちらのものであるかの論争は、日本では、井上清の中国領論と、奥原敏雄の日本領論が有名である。本書は奥原説に従って、日本領論を唱えるものであるので、すでに、奥原の論文や、関連書籍を読んでいる者にとっては、特に目新しい内容は感じられない。本書は新書版で、一般大衆を対象とした解説書。

・・・つづく・・・
井上清の罵倒

原田禹雄/著 『尖閣諸島 冊封琉球使録を読む』  (2006/01)  榕樹書林

 著者は、もと医療官僚で、歴史学の専門家ではなかったが、返還直前の琉球で医療活動に従事した縁で、沖縄史に興味を持ったようで、琉球冊封使関連の著書などがある。尖閣問題では、日本史学者の井上清による尖閣中国領論が有名であるが、本書は、井上の琉球冊封使関連の歴史理解に対して反論している。文章のニュアンスは、反論というよりも、罵倒のように感じる。
 本の最初の1/5程度が、尖閣問題の解説と、井上説の批判。残りの4/5は冊封使関連文書の抄訳。ただし、この中にも注釈として、井上説批判が多数書かれている。井上の尖閣中国領論は歴史的状況を多面的に論じているのに対して、本書は冊封使録の著者の解釈のみで、井上説を否定しているが、部分的考察にとどまっている。

・・・つづく・・・

山田慶兒/著『海路としての<尖閣諸島> 航海技術史上の洋上風景』 (2013.11) 編集グループSURE

 尖閣問題のうち歴史的経緯を理解する上で、欠かせない内容。

 中世、尖閣諸島は、中国・琉球の冊封使船や朝貢船の航海上の目印として利用されていた。当時の航海は、どのように針路を決めていたのか、本書では、その技術的内容が説明されている。15世紀初頭、鄭和による大航海があったが、中国・琉球の航海にも、この時の航海技術が受け継がれているとされる。
 中国中世の航海書『順風相送』の成立年代に対する検討もなされている。また、程順則による『指南広義』への言及も多い。

・・・つづく・・・
日中対立に関する解説 

岡田充/著 『尖閣諸島問題―領土ナショナリズムの魔力』  (2012/12)  蒼蒼社

尖閣問題に端を発した日中対立に関する解説書。著者は、元ジャーナリストなので、文章は読みやすい。

 本の内容は、尖閣問題の日中対立の最近の動向、尖閣問題の歴史的経緯、中国・日本・米国のこの問題に対する態度・あるいは外交関係を解説した後、領土問題を経済・外交関係などの、相互依存の中で相対化することを解く。
 また、巻末には、資料として、尖閣問題に対する、日・中・台それぞれの主張が掲載されている。

日中対立に関する解説

矢吹晋/著 『尖閣問題の核心―日中関係はどうなる』  (2013/01) 花伝社 

 日本政府は、尖閣諸島は日本の領土であり領有権問題は存在しないとの立場である。日中国交回復のとき、両国は、尖閣問題に触れることはしなかった。日中間で、尖閣問題を棚上げ合意したのか、もともと領有権問題は無いのか、両国の見解に相違がある。
 本書は、日中国交回復の経緯を丹念に調べ、棚上げ合意がなされたことを明らかにしている。また、尖閣問題に対して中国政府が何を問題としているのかを明確にしている。日本の主張は、かなりいい加減な政治宣伝であることを理解するために、本書は好適だろう。

 なお、本書の最後に、日中台3国の尖閣に対する主張を掲載されているが、主張の歴史的妥当性を考察するものではない。
尖閣に対する米国の態度の解明

『尖閣衝突は沖縄返還に始まる 日米中三角関係の頂点としての尖閣』矢吹晋/著(2013/08)花伝社

 沖縄返還のとき、米国は尖閣を含めて日本に返還した。しかし、返還は施政権のみであって、領有権について米国は関知しないとの立場だ。米国は、なぜ、このような不可解な態度をとるのか、本書ではこの点を明らかにしている。

・・・つづく・・・
沖縄大学教養講座の講義録

『尖閣諸島と沖縄: 時代に翻弄される島の歴史と自然』沖縄大学地域研究所/著 (2013/6)芙蓉書房出版 (沖縄大学地域研究所叢書)

 尖閣問題では、一方的に、日本固有の領土と主張する論調があるが、本書は、もっと学術的に、事実を解明しようとしている。尖閣問題の結論だけ欲しい人には向かないが、正しく理解したい人には、好適な教科書。

・・・つづく・・・
尖閣中国領論への反駁

いしゐのぞむ/著 尖閣反駁マニュアル百題 自然食通信社 (2014/6)


 本のタイトルは、「マニュアル」となっているので、いわゆるマニュアル本・ハウツー本のような低俗本の印象を受けるかもしれないが、内容は、必ずしもそういうことではない。

・・・つづく・・・
松井芳郎/著『国際法学者がよむ尖閣問題 紛争解決への展望を拓く』(2014/12) 日本評論社
 
 国際法の立場での尖閣問題の解説なのだけど、歴史的立場への考察もある。
 著者は、日本の領土であることに好意的であるが、現在日本政府の取っている「尖閣には領土争いはない」との主張には否定的。
 
 1895年、日清戦争のさなか、日本は尖閣を秘密裏に領有した。その後、下関条約で台湾が日本に割譲されたため、尖閣が日本領となることになった。1945年日本の敗戦に伴って、台湾は中国に返還されることとなったが、尖閣は、沖縄とともに、米国の支配となり、日本は施政権を失った。日本に施政権が回復するのは、1972年の沖縄返還以降である。中国・台湾が、尖閣領有権を主張するのは、沖縄返還直前のことである。
 著者は、この点を捕らえて、日本の尖閣に対する領域主権の継続的かつ平和的な表示が否定できないとするが、それでよいのだろうか。日清戦争中は、平和的とはいえない。戦後、米国占領統治下において「日本による領域主権の表示」と言えるのだろうか。
70ページの薄いブックレット

日本中国友好協会/編『尖閣問題〜平和的解決を〜』本の泉社 (2014/6)

 
尖閣問題の解説が45ページ程度、関連資料と年表が20ページ程度。
尖閣問題の解説は、日本政府の尖閣領有権主張と類似の説明が主で、さらに、中国側の主張を少し紹介している。そのうえで、話し合いによる平和的解決を主張している。
 
本が薄いので、詳しい話はないので、他書で、ある程度詳しい尖閣問題を学習した人には、特に読む必要はないように感じられる。
尖閣は日本領であることを前提とした本

山本皓一/著『日本の国境を直視する 1  尖閣諸島』  (2012/9/26) KKベストセラーズ


 全体の半分弱が写真。そのうちの7割強が尖閣の写真で、残りが、南鳥島・沖ノ鳥島・与那国島の写真。写真の出来栄えは良く、見ごたえがある。
 本の文章のうち、8割以上が尖閣の話題。領土問題に対しては、日本の主張を紹介し、それが、絶対的真実のような筆致で描かれている。ただし、この部分は多くは無い。
 著者は尖閣に上陸した数少ないジャーナリスト。自身の尖閣上陸の様子や、尖閣に灯台を建てた、広域暴力団住吉会の小林とともに、上陸した人の話、さらには、先ごろ尖閣に渡った新藤義孝衆議院議員のインタビュー、東京都の尖閣購入に対する猪瀬副知事のインタビュー、尖閣所有者だった栗原家インタビューなど、貴重な話題が豊富。
 最近の、尖閣問題に対する日本の動向を知る上で、重要な書籍であることは間違いない。
尖閣中国領論への反論

「尖閣問題総論」齋藤道彦/著 創英社/三省堂書店 (2014/3)

読むことを、勧めない。


 本の内容は、尖閣中国領論や、それに近い主張を批判するものであるが、論者ごとに批判しているので、内容に重複が多い。また、その批判も、他の論者の引用が多いので、この本を読むよりも、他の本を読んだ方が、尖閣日本領を容易に理解できるだろう。

・・・つづく・・・
尖閣中国領論への反論

日本人のための尖閣諸島史 斉藤道彦/著 双葉社 (2014/1)

読むことを勧めるわけではない。


・・・つづく・・・
尖閣日本領論

石平/著 「尖閣問題。真実のすべて」(2012.12) 海竜社


日本に帰化した中国人の著書。まったく、読むことを勧めない。

 本書は、日本に帰化した中国人による尖閣問題の解説本であるが、日本政府の説をそのまま焼きなおしているだけであり、主張に、新味がない。それどころか、日本語を母語としない人のためか、首をかしげる解説もある。日本政府の主張ならば、日本人による著書を読んだほうが、理解しやすくてよい。

・・・つづく・・・
横山宏章、王雲海/著『対論!日本と中国の領土問題』 (2013/1) 集英社新書
 
 尖閣問題に端を発した日中対立に関する、2人の学者による対論。2人共に、日本の大学院教授。
 対論形式であるため、話に統一感がなくなる傾向があり、若干、理解しにくい。各自が、自分の論を一貫して著したほうが読みやすかったのではないかと感じる。特に、横山氏の論は、何を言っているのか良く分からないところが多々あるが、対論ではなくて、文章を推敲した後、論文として執筆すれば、分かりやすかったと思われ、その点が残念だ。 全体として、横山氏が、日本の立場を主張し、王氏が、中立的立場でとりなしている。

・・・つづく・・・
尖閣日本領論

『中国が耳をふさぐ尖閣諸島の不都合な真実 石垣市長が綴る日本外交の在るべき姿』中山義隆/著 ワニブックス (2012/12/21)


 本のタイトルは「中国が耳をふさぐ尖閣諸島の不都合な真実」となっているので、中国に不都合な真実が書かれているのかと思ったら、そうではなくて、これまで、日本政府が主張していることの焼き直しが多く、特に新味のある研究成果があるわけではない。

・・・つづく・・・
『領土喪失の悪夢: 尖閣・沖縄を売り渡すのは誰か (新潮新書)』小川聡/著、大木聖馬/著 新潮社 (2014/7) 

 本書の目的は、尖閣にたいして、日中間で棚上げ合意があったとする見解を否定し、さらに、これらの研究成果を中国に領土を売り渡す詐術であるとするものだ。本書の半分ぐらいで、尖閣棚上げを論じているが、論拠が牽強付会な解釈で、読んでいて参考にならず、読むに堪えないと感じた。

・・・つづく・・・




日本の領土問題・日中関係を扱った本

この中の一部に、尖閣問題を扱っている。 このような本は多いので、一部を紹介する。

王緝思、ジェラルド・カーティス、国分良成/編 『日米中トライアングル 三カ国協調への道』  (2010/11) 岩波書店
 
 本の内容は、日米中、3国関係に関する12編の論文。
 
 第6章に、マサチューセッツ工大准教授テイラー・フレイヴェルの23ページの論文、『日米中関係と尖閣諸島(釣魚島)』がある。
 日本・中国以外の人による尖閣問題の論文は少ないので、その点でも興味が持てる。論文の内容は、尖閣が日中どちらに属するのかと言うことではない。領土問題がある場合は、関係国間で、解決の努力がはらわれるわけであるが、尖閣に関しては、日中両国ともに問題解決の意思が乏しく、先延ばしされてきた。お互いの主張が異なっているにもかかわらず、これまで、領土紛争が起こらなかった理由を、日中米3カ国の態度をもとに考察している。
孫崎享/著『日本の国境問題 尖閣・竹島・北方領土』 (2011/5/11) ちくま新書 905

 日本の領土問題を扱ったまともな本。日本の領土問題を扱った本の多くは、日本政府の主張を焼き直して、自分勝手な意見を主張するものが多い中、この本はそうではなくて、まじめな歴史知識により、現実的な領土問題の解決を目指す。
 領土問題では、日本に都合のよい歴史的事実だけを羅列して、都合の悪いことはひたすら無視するか、事実を捏造することが、日本では行われている。こんなことが、領土問題の解決につながらないことは明らかだ。

 本書の著者は、長年、外交官として、外交問題にあたってきた。本書は、著者の経験と理性により、領土問題の解決方法の理念を示すもの。本書に示された、歴史的事実は、必ずしも日本に都合の良いことばかりではなく、日本国民を偏狭なナショナリズムに扇動する勢力にとっては、受け入れがたいことかもしれない。しかし、史実は史実として、正しく認識しなくてはならない。北方領土・竹島・尖閣列島に関して、日本政府の主張しか知らない人は、本書を熟読して、冷静になって欲しいものだ。
 2010年秋、尖閣問題で日中が衝突したことがあったが、この島々が日中外交では、どのような扱いになっているのか、簡潔にまとめられている。この部分だけでも、一読の価値がある。
岩下明裕/編著「領土という病」 北海道大学出版会(2014.7)  

 日本の領土問題について、複数の人の講演や対談がまとめられている。内容は一般的解説ではなく、研究者の講演・対談集。
 領土問題の考え方、竹島問題、北方領土問題、尖閣問題、領土問題と政治の関連、領土問題と世論、等、幅広い内容。逆に言うと、個々の問題に対する深い解説は無い。このため、日本の領土問題にあまり詳しくない人が読んでも、話が散漫になっているように感じるだろう。しかし、ある程度、日本の領土問題を学んだ人ならば、領土問題に対して、どのような視点を持つべきかのヒントが得られるように思う。
 10人の研究者が、各自、いろいろな立場で解説しており、参考になる内容は多いので、日本の領土問題に関心のある人には、一読の価値があるだろう。
松竹伸幸/著「日本の領土問題を考える」 かもがわ出版 (2013/03)

 子供向けに、日本の領土問題を易しく書いた本。尖閣問題が話題の時期に書かれたので、尖閣問題の記述が多い。
 子供向けの本ではあるが、相互に矛盾のある記述や、事実と異なる記述があるようだ。子供向けの本では、相互矛盾は良くない。

・・・つづく・・・
西牟田靖/著『誰も国境を知らない 揺れ動いた「日本のかたち」をたどる旅 』 (2012.11) 朝日文庫

本の内容は、著者が訪れた地域の取材記。北方領土、竹島、尖閣、沖ノ鳥島など普通の日本人が訪れることができない場所を取材している。北方領土には、二度、ロシアのビザを取っての訪問である。
著者は、取材した事実を客観的に書いており、好感が持てる。
日本の国境問題を考えるためには、実際に国境地域がどのようになっているのかを知ることが重要だ。日本の領土問題を考える上で、実際にその地域がどうなっているのかを知る上で、参考になる本だ。
『世界の領土・境界紛争と国際裁判【第2版】』 金子利喜男 /著 明石書店; 第2版 (2009/5/14)
 領土問題を国際法で解決することを勧める書。本の1/3ぐらいは、北方領土、尖閣、竹島について、日本の主張と対立国の主張を記載し、国際法による解決を勧めている。  ・・・つづく・・・
すぐわかる日本の国境問題 山田吉彦/著 海竜社(2013.12)
 日本の領土問題について、要領よくまとめられている。基本的には、日本政府の主張と同様な主張で、政府が無料で配布している資料の範囲を超えた内容は多くない。また、著者は、テレビの解説等にも出演しているため、新味のある内容はほとんどないように感じる。本は300ページを超える分量ではあるが、字が大きく、本の厚さの割には、内容が薄い。このため、すでに、日本の領土問題に対して、ある程度、知識のある人は、特に読む必要はないかもしれない。
 ざっと読むと、上記のようなのだけれど、注意して読むと、おかしな記述が多々ある。読者をだます悪意で書かれた本とは思いたくないが、真相はどうなのだろう。   ・・・つづく・・・
山田吉彦/著『国境の人びと: 再考・島国日本の肖像』 新潮選書(2014/8)
 本の内容は、領土問題を扱ったものと言うよりは、日本の国境地域のようすや、人々の生活を記載している。多くは、著者の取材に基づいた記述と思われる。このため、領土問題を政治・歴史的側面から考えるのではなくて、日本の国境地域の現状について、考える上で、参考になるだろう。気楽に読める内容になっている。 ・・・つづく・・・
『領土問題、私はこう考える! 孫崎享、山田吉彦、鈴木宗男ほか識者たちの提言』 畠山理仁/著 (2012/11) 集英社
 日本の領土問題に取り組んでいる、12人による執筆。 ・・・つづく・・・
『領土問題から「国境画定問題」へ -紛争解決論の視点から考える尖閣・竹島・北方四島-』 名嘉憲夫/著 (2013/7) 明石選書
 日本の領土問題である、北方領土・竹島・尖閣を、日本では、これらを固有の領土であると主張しているが、著者は、過去に平和裏に解決したときのように、国境画定問題として対処すべきと説いている。 ・・・つづく・・・
草原和博 他/編・著『”国境・国土・領土”教育の論点争点』明治図書 (2014.8)
現在話題の日本の国境問題に矮小化することなく、領土や国境についてどのように教えるのか、社会科教師が考えてゆく上での情報・視点を提供するもの。小学校・中学校の社会化授業を対象にしている。 ・・・つづく・・・
日本の領土問題と海洋戦略―尖閣諸島、竹島、北方領土、沖ノ鳥島』 中内康夫 他/著 2013.1.25(朝陽会)
 参議院外交防衛委員会調査室調査員を務める4氏による執筆。
 本書の内容は、日本の領土問題に対する日本政府の立場の説明。対立国の主張も若干含まれている。領土問題では、事実と、日本政府の主張、対立国政府の主張があるが、本書では、それらが明確になるように記載されており、日本政府の主張と根拠が容易に理解できるようになっている。 ・・・つづく・・・

以下の本もあります。

保阪正康・東郷和彦/著『日本の領土問題 北方四島、竹島、尖閣諸島』角川書店 (2012.2)

浦野起央/著『日本の国境 分析・資料・文献』2013.7 三和書籍 ・・・More・・・
 
松竹伸幸/著『これならわかる日本の領土紛争』 大月書店 (2011.8)
 
山田吉彦/著『日本国境戦争 21世紀・日本の海をめぐる攻防』ソフトバンククリエイティブ (2011.7.21)

新崎盛暉、岡田充、高原明生、東郷和彦、最上敏樹/著 『「領土問題」の論じ方 』 岩波ブックレット(2013.1) 岩波書店

松竹伸幸/著 『13歳からの領土問題』 かもがわ出版(2014.10)   ・・・More・・・

浦野起央/著 『地図と年表で見る日本の領土問題』 三和書籍 (2014/8)   ・・・More・・・

沢辺有司/著 『ワケありな日本の領土』彩図社 (2014/7)   ・・・More・・・

吹浦忠正/監 『日本の国土と国境』 出窓社(2013/7)   ・・・More・・・



尖閣問題関連の本

栗原弘行/著『尖閣諸島売ります』  (2012/9/28) 廣済堂出版

 尖閣列島は、以前は、古賀氏が所有していたが、その後、栗原家が所有した。最近、政府に売却した。 本書は、栗原家次男の栗原弘行による、尖閣と栗原家のかかわり合いの話。
・・・つづく・・・
一色正春/著「何かのために sengoku38の告白」(2011.2) 朝日新聞出版
 特に、お勧めしない本

 2010年、尖閣周辺で、中国漁船が海保警備艇に体当たりして捕まった事件で、録画映像をYouTubeに流した男がいた。公務員の守秘義務違反であるが、軽微な犯罪であるとの理由で、不起訴処分になった。本書は、本人による執筆で、言い訳に終始している。逮捕されて、海保を懲戒処分になった挙句に、まだ、このような自分勝手な言い訳とは、海保の職業教育はどうなっているのだろう。海保幹部の猛省を求めたい。

・・・つづく・・・
『波よ鎮まれ (尖閣への視座)』渡辺豪, 嘉数よしの,又吉嘉例/著, 沖縄タイムス「尖閣」取材班/編 旬報社 (2014/4)

 本の内容は、八重山の人と、台湾の人に対する尖閣問題のインタビュー。

・・・つづく・・・
琉球新報、山陰中央新報/著『環りの海 竹島と尖閣国境地域からの問い』岩波書店(2015/2) 
 
 竹島問題・尖閣問題のために、漁業が制約を受けているので、それを漁民を中心に、地元新聞である山陰中央新報・琉球新報が取材したもの。領土問題そのものの解説は少なく、領土問題のために居住民がこうむっている迷惑が話題の中心。でも、領土問題がない地域でも乱獲の問題は珍しくないことや、漁業の衰退は全国的傾向なので、領土問題と捉えてよいのか疑問だ。
 本書には、漁業問題の他に、オーランド諸島など、世界の領土問題解決事例が記載されているが、状況や歴史的経緯が異なるので、そのまま当てはめることはできないが、領土問題に関心が余りない人が、領土問題を考える上で、参考になるのかもしれない
尖閣諸島灯台物語』 殿岡昭郎/著 高木書房 (2010/06)
あまりお勧めする本ではない。

 尖閣には、指定広域暴力団住吉会系右翼団体の灯台が建てられている。尖閣は埼玉県大宮市在住の栗原氏の所有だったので、栗原氏が、どのようないきさつで、指定広域暴力団住吉会に灯台建設を許可したのか、あるいは、やくざが無断で建てたのか、それが知りたくて本書を読んでみた。
 この点に関して、明確な記述はないが、栗原氏は北小島の灯台建設を政府圧力で許可しなくなったような記述があるので、魚釣島の灯台は、栗原氏が建設許可をしているのだろう。この灯台は、その後、政府に移管されたのだから、土地所有者に無断で建てられたものとは考えにくい。しかし、栗原氏と指定広域暴力団住吉会との関係は、本書には全く記されていない。

・・・つづく・・・
『尖閣激突 日本の領土は絶対に守る』山田吉彦・潮匡人/著 (2012.11)扶桑社
特に、お薦めする本ではない。


 元自衛官で拓殖大学客員教授の潮匡人氏と、東海大学教授・山田吉彦氏の対談。両氏ともに、右系親米保守の論客なので、基本的考えは近いのだろうけれど、一致しないところも多々あり、対談形式だと、両氏の論が分かりにくい。2人の別々な論文にしたほうが読みやすかったと思う。
 対談の内容は、尖閣をどう守るか、中国にどう対処すべきか、これまでの対応は正しかったか、このような観点で一貫している。

・・・つづく・・・
『台湾海峡紛争と尖閣諸島問題: 米華相互防衛条約 参戦条項にみるアメリカ軍』 毛利一/著 (2013/3/25) 彩流社

 現在、日中韓の領土紛争となっている尖閣諸島は、日米安保条約の適用対象地であるので、軍事衝突が起こったら、直ちに米軍が参戦するかのような錯覚を持っている人がいる。実際にはどうなるのか。
 本書では、過去の類似の例として、1958年ごろの台湾海峡紛争と米華相互防衛条約の歴史を詳述し、当時、アメリカ軍は参戦せず、軍事援助と後方支援に終始した事実を指摘している。
 本書は、尖閣問題を解明するものではないが、過去の歴史を振り返ることは、現在の尖閣問題の対応を考える上で、参考になるだろう。
『われわれ日本人が尖閣を守る』 加藤英明/監修 高木書房(2014.1)

 特に読むことを、勧めない。

 本のページ数は100ページ弱で、写真も多いため文章が少なく、詳しい説明は期待できない。
 本は3部構成。第1部・第3部は、合わせて20人程度の人が、それぞれ2ページ程度執筆しているが、ページ数が少ないのに写真や箇条書きがあって、内容が乏しい。読書が苦手な人が、マンガ本を読むつもりで、ざっと理解した気になるためには便利な本かもしれない。

・・・つづく・・・
江戸雄介/著『尖閣諸島どうする日本』 (1996/12) 恒友出版
特に、読むことをお薦めしない本

 尖閣問題で、日本の主張が絶対的に正しいとの前提で、「中国が不法に尖閣を狙っているぞ」、「日本は、中国と対決しなくてはならないぞ」との主張を展開している。このほか、先の大戦では、日本はあまり悪くなかったんだ、通州事件を見ると中国の方がずっと恐ろしいとの説明をしているが、これは、直接的には尖閣問題と関係ないことだろう。尖閣問題で日本に都合のよい主張をするのは良いとしても、国際的に非難を浴びた日本のかつての行為を弁解しながらだと、尖閣問題の国際理解は得られにくくなるのだろう。

『尖閣一触即発 中国の圧力を跳ね返すことが出来るのか』山田吉彦、井上和彦/著 (2013/4/19) 実業之日本社

 全6章のうち、3つの章が対談。山田の解説が1章、井上の解説が2章。二人は、もともと意見が近い人なので、対談ではあっても、一人の解説のようで、読みやすい。本書は、全体として、中国脅威を唱えるものなので、この問題に関心のある人には、ある程度、役に立つのかもしれない。尖閣問題の歴史的経緯等の解説本ではない。

・・・つづく・・・
『暗闘 尖閣国有化 春原剛/著』新潮社(2013.7)

 2010年に尖閣周辺で、中国漁船と海保巡視船との接触があり、海保は漁船員を逮捕した。この事件をきっかけに、日中が鋭く対立した。結局、起訴猶予処分で終了したが、その後の、日中対立が今も続いている。
 本書は、この衝突事件と、政府の対応から、その後起こった、石原の尖閣購入発言、政府による尖閣国有化に至る経緯を、主に日本政府内部・関係者の動きを中心に記載している。

・・・つづく・・・
『尖閣諸島 尖閣上陸 日本領有の正当性』牧野清・仲間均/編 尖閣諸島を衛る会(1997)

 尖閣には、広域暴力団・住吉会系の右翼団体が灯台を立て、保守名目で時々上陸している。本書は、地元活動家(市議)と産経新聞記者が、海保の要請を無視して、尖閣に上陸した時の様子が書かれている。また、その後、非弁活動で有罪が確定する国会議員と共に上陸したときの様子にも触れられている。前者はある程度詳しいが、後者はあまり詳しくない。
 このほか、尖閣が日本の領土であるとの説明もなされているが、この部分は、政府の説明を超えるものではなく、政府説明のほうがむしろ分かりやすい。このため、この部分を読む意義はあまりないだろう。
尖閣防衛戦争論 中川八洋/著 (2013/6) PHP研究所
読むことを勧めない。


 本の60%は、尖閣問題で、中国に対決するため、軍備を備えよと説く。しかし、日中軍事衝突にならないための処方箋はない。また、日中軍事衝突になった時に局地戦で終わらせるための処方箋もない。だとすると、日中全面戦争も辞さないとの覚悟なのかと言うと、全面戦争を戦い抜くための処方箋もない。要するに、無責任な軍備増強論。
 本の残りの40%は孫崎享氏批判。最近、孫崎氏の活躍は目覚ましいものがあるので、批判するのもわかるのだけど、もう少し、きちんとした知識で批判して欲しかった。
矢吹晋/著 「敗戦・沖縄・天皇 尖閣衝突の遠景」 花伝社 (2014/8)
特に、読むことをお薦めしない本

 本書は2部構成で、このうちの第1部で、サンフランシスコ条約と天皇の役割を考察し、尖閣問題にも言及している。内容は、サンフランシスコ条約と天皇発言の概要を説明したのちに、豊下楢彦氏の著書の批判している。尖閣問題については豊下批判のみ。豊下説に関心が高い人が、豊下論文を検討するために本書を読むのは良いかもしれないが、そうでない人にとって、本書がどれほど有益なのか、疑問だ。
 第2部は、朝河寛一の天皇制議論の解説で、領土問題とは関係ない。

・・・つづく・・・



琉球史など尖閣問題理解のための周辺知識を得るための本

中世に国家はあったか 新田一郎/著  (2004/09) 山川出版社(日本史リブレット)

 100ページあまりの薄い本。  現在、日本は3つの領土問題を抱えているが、すべてにおいて『日本固有の領土』と主張している。短絡的に、固有の領土と主張する前に、日本の歴史を振り返った時、日本の国家とは何か、領土とは何か、そもそも国家があったのか、そういうことを考えてみる必要を感じる。現代国際社会における国家や領土の概念と、アジア中近代における国家・領土概念は一致しない。  本書は、このようなことを考える上で、参考になる。
『高等学校 琉球・沖縄史 改定・増補版』新城俊昭/著  東洋企画(2001)

 版を重ねて、最新版が発売中。写真のものは、ちょっと古い版。
 本書は、高校生向け琉球・沖縄史の教科書として出版されたものであるため、先史時代の琉球から、現代の沖縄まで、時代に従って、琉球・沖縄の歴史を解説 している。全体を「先史時代」「古琉球」「薩摩藩支配時代」「廃藩置県以降」「戦後」と、5つに分けているが、このうち、廃藩置県以前が全体の半分を占め る。
 日本とは異なった歴史を持つ沖縄史を知る上で、格好の教科書。琉球・沖縄の全史であるため、個々のトッピクは詳しくない。
琉球王国 東アジアのコーナーストーン 赤嶺守/著(2004/4/3) 講談社選書メチエ

 グスクの時代から明治の琉球併合まで、琉球王国の歴史を時代をおって書かれた記述で、琉球の歴史を学習するために向いている。著者の専門のためか、琉球国内史は多くなく、琉球と周辺国との関係史、特に、明・清との関係史の記述が多い。

・・・つづく・・・
新琉球国の歴史 梅木哲人/著 法政大学出版局 (2013/4)

 古琉球から明治までの琉球国の通史。琉球の対外関係に主眼が置かれているようであるが、琉球国内の歴史記述も詳しい。本は、一般読者を対象としているようで、特に、予備知識無しに読むことが出来る。琉球史をまじめに学びたい人には読書の価値はある。琉球史の教科書として適当。
久米村 歴史と人物 池宮正治/著 ひるぎ社(1993)

 14世紀末、琉球は中国(明)と冊封関係を結ぶ。つまり、中国が宗主国、琉球が服属国となり、中国中心の国際秩序に組み込まれた。冊封関係を結ぶと、琉球は、航海に使用する船舶を下賜され、また、同時に、航海技術者や通訳なども下賜された。彼らは久米村を築いたため久米三十六姓と呼ばれた。実際に、36の姓があったわけではなくて、36が縁起の良い数だったため、このように言われたのだろう。中国人が琉球に居住したは、冊封の時が最初ではなくて、それ以前にも、貿易などの目的で、琉球に居住していた中国人がいたことが知られているので、このような人を合わせて、久米三十六姓が始まっている。久米三十六姓の人たちは、明治になるまで、琉球王国において中国人とみなされていた。

・・・つづく・・・
海の王国・琉球 上里隆史/著 洋泉社・歴史新書(2012/2)

 島津の琉球侵攻までの琉球の歴史を海外交流・貿易の視点で描いている。中国、東南アジア、日本との貿易について、それぞれ詳述される。中国との貿易では、朝貢貿易のほかに、民間貿易についても書かれていて、興味が持てる。また、三山時代、各王朝の朝貢貿易や、久米三十六姓の関係にも触れられている。

 本書は、通史ではなく、王朝史も少ないで、琉球史の予備知識がない人には、分かりにくいと思う。他書で、琉球史の概要を理解した後で読むと良いように感じた。
『図説 琉球王国』高良倉吉・田名真之/編 河出書房新社(1993.2)

 先史時代から明治までの琉球の歴史を、豊富な遺跡の写真などをもとに、易しく説明。琉球史の概要をざっくりと理解するため、あるいは、史跡を訪ねるガイドに便利。しかし、解説の文章が少ないので、詳しいことは、他書を読む必要がある。

・・・つづく・・・
アジアの中の琉球王国 高良倉吉/著 吉川弘文館 (1998/09)

 14世紀末に、琉球は中国と冊封関係を結び、形式的な属国になった。琉球は中国に朝貢することになるが、そのための船は、中国から支給され、船員も中国人が担った。このときの中国人は、那覇市久米に住み着いたため、久米36姓という。
 中国から支給された船や、中国人船員により、東南アジアとの貿易も活発に行われることになった。琉球では、東南アジアと貿易して得た商品を、中国に送 る、あるいはその逆の、中継貿易により栄えることになる。東南アジア貿易では、現地華人社会と、那覇市久米の華人との人的な繋がりが利用された。
 本書はこの時代の琉球と東南アジア貿易の実態について、かなり詳しく書かれている。

・・・つづく・・・
琉球と中国 忘れられた冊封使 原田禹雄/著 (2003/4) 吉川弘文館

 明・清代、琉球は中国から冊封を受けた服属国だった。
 琉球王が替わると、中国により王であることを命ぜられる儀式が行われた。この儀式のために、中国からやってくる役人を冊封使と言う。
 本書は、冊封使の著した記録を中心に、冊封使の様子を明らかしている。さらに、冊封のさま、これらにまつわる那覇・首里あたりの遺跡の説明がある。
 本書は、現在の領土問題とは、直接関係ないが、冊封使は尖閣を標識島として航海したので、尖閣領有権問題の歴史的側面を考える上で、参考になる。
上里隆史/著、喜納大作/著 『知れば知るほどおもしろい 琉球王朝のすべて』 河出書房新社 (2012/6)


琉球王朝の話題を、トピック的に取り上げ解説したもの。琉球の通史を、一応学んだ者が、気楽に読むと良いだろう。取り上げている話題は、なかなか高度で、琉球史のあまり知られていない一面を分かりやすく解説している。

・・・つづく・・・
平岡昭利/著『アホウドリと「帝国」日本の拡大 南洋の島々への進出から侵略へ』明石書店 (2012/11)
 
 2015年3月に岩波新書で『アホウドリを追った日本人 一攫千金の夢と南洋進出』が出版された。本書は、岩波新書と同様な内容だが、記述が詳しい。重要な点をざっくり理解したい人は、岩波新書を読めば十分だろう。 
 本書のなかで尖閣について書かれた部分では、尖閣所有者だった古賀辰四郎について、その履歴をめぐって通説に事実誤認があると指摘している。
徐恭生/著 『中国・琉球交流史』ひるぎ社(1991.3) 西里喜行、上里賢一/共訳  (おきなわ文庫56)
 
 明治以前、琉球は中国を宗主国とした藩属国だったため、琉球王が交代するときには、中国から琉球王任命の施設がやってきた。この後、琉球からお礼のための使節が中国にわたった。また、朝貢貿易のため、琉球から中国に渡ったことも多い。
 本書は、中国・琉球交流の歴史のうち、琉球から中国に渡った人たちの、中国でのようすを、主に中国側資料によって明らかすることがメインテーマで、中国に残る琉球人墓、中国における琉球人留学生、について、詳しい説明がなされている。
 このほか、19世紀中ごろに起こったアメリカの中国人奴隷売買に対する中国の暴動−バウン号事件−と琉球の関係、天妃信仰、琉球国王印の研究成果も記されている。
福州琉球館からみた琉球と中国の交流史

深澤秋人/著『近世琉球中国交流史の研究 居留地・組織体・海域』榕樹書林 (2011/09)
 

 日本の室町時代、琉球は明国と冊封関係を結び、明国を宗主国とする、藩属国になった。琉球王が交代するたびに、中国から冊封使がおとずれた。また琉球からは、数年に1回から年に数回、朝貢のための使節が中国を訪れた。琉球から中国を訪れる使節は、初期を除き、福州の琉球館に滞在した。琉球館は通称で、正式には「柔遠駅」と言う。
 本書は、福州琉球館の様子、歴史、中国に渡った使節、中国文化を学習のために渡った人々など、琉球館からみた、琉球と中国の交流の歴史を明らかにしている。本書は、著者の学位論文を母体としているため、内容は専門的であって、一般読者の娯楽・教養のための本ではない。

・・・つづく・・・
新崎盛暉/著 『沖縄を越える 民衆連帯と平和創造の核心現場から』(2014.5)凱風社

 基地問題・沖縄集団自決教科書記述問題など、現代沖縄の問題に対する10編の論文・対談。本土との関係を論ずるものが多い。
 このうち、第6章は「沖縄から見た尖閣問題」で、尖閣が日本の領土であることを前提に、日中両国の対立を煽ることに反対している。

・・・つづく・・・
徳永和喜/著 『偽金づくりと明治維新』(2010/3) 新人物往来社

 琉球を支配した薩摩藩は、琉球を介して清国と貿易をすることにより、利益をあげていた。
 本書は、薩摩藩による贋金づくりの実態を解明したもの。

・・・つづく・・・
松島泰勝/著『琉球独立論』バジリコ (2014/7)

 琉球独立論を唱えることが、悪いことだとは思わないが、当面、可能性があるとは思えない。

 2013年、龍谷大学経済学部教授・松島泰勝らは、琉球の独立を前提として、琉球独立に関する研究・討論を行う「琉球民族独立総合研究学会」を設立し、琉球独立の啓蒙活動を行っている。本書は松島泰勝の琉球独立の理論的裏付けを与えるもの。

・・・つづく・・・
『列島史の南と北』菊池勇夫・真栄平房昭/編 吉川弘文館(2006/11)
 10人の執筆者が、中世における「沖縄」「沖縄と北海道の交易」「北海道」の3つのテーマで執筆。10の章は、特に関連性はないので、興味のあるところだけを読むこともできる。  ・・・つづく・・・




DVD

徐葆光が見た琉球 冊封と琉球

 日中国交正常化40周年、沖縄返還40周年を記念して企画されたドキュメンタリー映画。DVDは2013年発売。
 明・永楽帝の時代、琉球は明国と冊封を受け、このとき以来、琉球王が交代するときは、明・清から王の任命を受けることになった。琉球王の任命のために、中国の役人・冊封使が渡琉した。
 徐葆光は、琉球国の尚敬を 中山王に冊封する冊封副使として、1719年に、琉球にやってきた。琉球滞在8ヶ月の期間中の見聞を元に「中山伝心録」「海舶集」を著し、琉球への渡航、冊封の儀礼、琉球の風俗などを詳細に記した。
 この映画は、徐葆光を中心とする当時の琉中関係や彼の記述した琉球宮廷料理・琉球宮廷舞踊の再現と解説。ドラマ仕立てもあるが、多くない。



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